日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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液胞プロセッシング酵素はイネ種子グルテリンの結晶構造形成に寄与する
*熊丸 敏博井上 佳美西村 いくこ竹本 陽子小川 雅広佐藤 光
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p. 0133

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抄録
イネ種子グルテリン前駆体のプロセッシングを制御する酵素の機能を明らかにするために、同前駆体を貯蔵型液胞 (PSV) 内に多量に蓄積するglup3 突然変異体を解析した。glup3 変異体3系統の登熟種子では、液胞プロセッシング酵素(VPE)活性が野生型と比べて顕著に減少していた。野生型種子においてPSVは不定形で、PSV内にはα-グロブリンとグルテリンが偏って集積する。glup3 変異体では、PSVは球状を示し、α-グロブリンとグルテリンがPSV内に均一に分布していた。さらに、野生型のPSV内のグルテリンのみが集積している部位ではグルテリンの結晶性格子構造が観察されるが、glup3 変異体において同構造は認められなかった。これはイネ種子において、VPEによるグルテリン前駆体のプロセッシングが、貯蔵タンパク質の区画化とPSVにおけるグルテリンの結晶性格子構造の形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。さらに、glup3 幼苗の生育の遅れが観察された。これはグルテリン前駆体のプロセッシングが幼苗の生育に影響を及ぼすことを示しており、幼苗の初期生育のための窒素源としてグルテリンの迅速な利用にとって、結晶構造を有するグルテリンのPSV内への貯蔵が重要であることが考えられる。
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© 2010 日本植物生理学会
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