抄録
トランスゴルジネットワーク(TGN)は,小胞体からゴルジ体へと輸送されたタンパク質が,液胞,細胞膜等の目的地別に選別・輸送される際の分岐点となる重要なオルガネラである。植物においては,TGNはエンドサイトーシス経路の最初のコンパートメントとして初期エンドソームの機能を有するという報告もあり,TGNの構造・機能についての理解はあまり進んでいない。我々は,高等植物におけるTGNの構造・機能を明らかにすべく,TGNマーカーとして,動物・酵母においてTGNに局在するQa-SNARE分子のオルソログ,SYP43にGFPを融合させたタンパク質を用いて,ライブイメージングによるTGNのダイナミクスの解析を行った。その結果,根の分裂域の細胞ではTGNはゴルジ体のトランス側に存在するが,分化域の細胞ではゴルジ体とは独立したTGNも存在しており,組織・細胞の種類によってTGNの挙動が異なることを見出した。次に,TGNの高次機能を明らかにするため, SYP4グループについて変異体の解析を行った。その結果,それぞれの単独変異体(syp41,syp42,syp43)及び二重変異体(syp41syp42,syp41syp43)では目立った表現型は観察されなかったが,syp42syp43二重変異体では植物の矮化など多面的な表現型が観察された。これらの結果より,TGNの高次機能についても議論したい。