抄録
植物の有性生殖において、助細胞は、花粉管誘引や精細胞放出など、受精の各段階に不可欠な細胞である。当研究室のトレニア助細胞のEST解析から見出された助細胞特異的な分泌性タンパク質LURE1, LURE2に、培地上で花粉管誘引能が示された。また、レーザーインジェクション(LTM)法でモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)を胚嚢に導入してLUREsそれぞれを単独で発現阻害すると、花粉管誘引率の有意な低下が見られた(Okuda, Tsutsui et al., Nature, 2009)。しかし、LUREsが単独で働くのか協調的に働くのかは明らかになっておらず、助細胞で発現する他の遺伝子群の機能も未だ不明のままである。
これらの疑問を解決するため、まず、LUREsの同時発現阻害により、それらが冗長的に働くのかを調べた。MOによるLUREsの発現抑制は、新規に開発した胚珠1個(助細胞は2個しか含まれない)という微小組織からの効率的なRNA抽出法を用いて行った定量的RT-PCRにより確認した。さらに、全ESTを詳細に見直した結果、助細胞特異的に高い発現を示す遺伝子が新たに見つかり、同一ファミリーの遺伝子が助細胞で6つ高発現していることも明らかとなった。これらの遺伝子については、LTM法でMOを導入することで発現阻害を試みた。
以上の解析から、助細胞で発現する遺伝子やその機能について考察する。