抄録
ホウ素は植物の必須栄養素で、雄性不稔はホウ素欠乏症状の一つである。ホウ素トランスポーターBOR6およびBOR7は花粉管で特異的に発現している。本研究では、BOR6およびBOR7の花粉管伸長における役割について検討した。
まず、in vivoでの花粉管の伸長を観察した。ホウ素欠乏条件では、野生型株では雌ずい下端まで花粉管が到達した後、雌ずい下部の胚珠に花粉管の侵入している例が多かった。一方、BOR6およびBOR7の両方にT-DNA挿入を持つ二重変異株では花粉管が野生型より短く、雌ずい上部で伝達組織を出て胚珠に到達しているものが多く観察された。このような異常は通常のホウ素濃度で栽培した二重変異株では見られなかった。BOR6またはBOR7 に挿入されたT-DNAをヘテロに持つ系統をホウ素欠乏条件下で生育させると、後代でT-DNAをホモに持つ植物の出現頻度が低く、T-DNAを持たない植物の出現頻度が高かった。T-DNAを持つ個体は鞘の上部に実った種に高頻度で見られた。BOR7 のT-DNA挿入変異株にBOR7とGUSの融合遺伝子を導入したところ、分離比の偏りは回復した。以上からBOR6、BOR7が機能することで花粉管が十分に伸長し、雌ずい内の全ての胚珠に到達することを可能にしていると考えられる。