抄録
イネ栽培種の亜種間交雑では種分化に重要な役割を担うと考えられる様々な生殖的隔離が存在する。我々は日本型イネの日本晴 (N) とインド型イネのKasalath (K) 間で生殖的隔離を引き起こす2つの遺伝子DOPPELGANGER (DPL) 1とDPL2 の単離を行った。両者は高い相同性を持つパラログ遺伝子であり、高度に保存された植物特異的なタンパク質をコードしている。発現解析と遺伝学的解析から、機能欠損型である第1染色体のK型アリルDPL1 (DPL1-K)と第6染色体のN型アリルDPL2 (DPL2-N)の両方を併せ持つ雑種花粉の不発芽がこの隔離を引き起こすことが分かった。また、系統学的解析から植物の進化の過程でDPLの重複と機能欠損が起こった時期を特定することが出来た。