抄録
異なる種間での遺伝子の移行を遺伝子の水平伝播という。高等植物間における水平伝播の例は少なく、ミトコンドリア遺伝子の種間伝播や、トランスポゾンの近縁種間伝播などの報告がある。寄生植物は、ミトコンドリア遺伝子の水平伝播に関わることが報告されているが、核遺伝子の水平伝播への関与は明らかではなかった。今回我々は、寄生植物ストライガと宿主植物間の核遺伝子の水平伝播を示唆する結果を得たので報告したい。
ハマウツボ科寄生植物ストライガ(Striga hermonthica)はモロコシやイネなどのイネ科植物を宿主とする根寄生雑草である。ストライガは宿主植物の根に寄生し、維管束系を連結させ栄養分を奪って生活する。我々は、ストライガは真正双子葉類に属するが、その宿主が単子葉類に限定されることに着目し、ストライガEST配列中から単子葉類特異的な遺伝子配列を探索した。BlastX相同性検索により、真正双子葉類ゲノムおよびESTデータベース中にホモログを持たず、単子葉類にホモログを持つストライガEST配列を探索し、水平伝播候補遺伝子とした。そのうちの一つは、ストライガの宿主であるモロコシ遺伝子と最も近い系統関係を示した。この候補遺伝子の周辺ゲノム配列を決定したところ、タンパク質コード領域外にもモロコシゲノムと相同性を持つ領域を持つことが明らかになり、水平伝播の可能性が極めて高いと考えている。