抄録
高等植物のオルガネラは独自のゲノムを持っているが、その遺伝子の発現は核コードの因子によって大きく制御される。オルガネラ遺伝子は、RNAの切断、編集、安定化や翻訳などの様々な転写後段階で制御を受けることが知られている。最近このような制御に、植物のみで大きなファミリーを形成するPentatricopeptide repeat (PPR)蛋白質が主要な役割を担うことが明らかになってきた。通常PPR蛋白質は約10個の連続したPPRモチーフで構成される。PPR蛋白質はそれぞれが異なるRNA分子の切断、編集、安定化、翻訳などに関わるが、PPRモチーフ自身に酵素的な活性は見いだせないことから、その分子実体は配列特異的なRNA認識アダプターだと考えられている。この配列特異的なRNAの認識は、PPR蛋白質を構成する約10個のPPRモチーフの種類と組み合わせに依存すると考えられているが、その機構は全く明らかでない。
我々は標的RNA分子がすでに特定されているいくつかのPPR蛋白質を用い、全長及び部分長蛋白質のRNAとの結合様式を解析した。さらにPPR蛋白質の立体構造予測を基にアミノ酸変異を導入し、RNAとの結合に働くアミノ酸を探索した。その結果、いくつかのアミノ酸がRNA結合に深く寄与していることが示唆された。