日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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イネ幼苗の低温下の光合成に及ぼす高地温の影響(3)
*鈴木 健策大森 幸美
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p. 0375

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抄録
イネ(あきたこまち)幼苗では「高地温」に依存した低温障害が起こる。すなわち、幼苗全体を10℃(L/L処理)に1週間曝しても葉に可視的な障害は認められない。しかし地下部を25℃に保ったままで地上部だけを10℃で低温処理(L/H処理)すると、光の有無に関係なく24時間以内に光化学系IIとIの間の電子伝達が遮断され、光化学系Iの循環的電子伝達能力が失われる。さらに半日以上処理を続けると、光に依存した脱色が葉に広がり、常温(25℃)に戻すと脱色が更に広がりその部分を中心に枯死する。このような障害が硝酸存在下でのみ起こることをこれまで明らかにしてきた。今回、この「高地温依存性低温障害」と硝酸の関係解明の手掛かりを得る目的で、硝酸飢餓状態の幼苗を新しい水耕液に移すと共に低温処理し、水耕液、根、第3葉における主要無機イオン濃度の経時的変動を比較検討したところ、(1)高地温依存性低温障害は硝酸飢餓状態の幼苗でより顕著、(2)根では初期から急速に硝酸が蓄積、L/Hでは常温時とほぼ同じ、L/Lではその半分程度、(3)葉への硝酸蓄積は、常温では処理24時間頃まで根の半分程度で推移するのに対し、L/Lではほとんど蓄積せず、L/Hでは初期に急速に蓄積し、その程度は処理12時間頃まで常温時の数倍、(4)L/Hの葉でのみ亜硝酸が検出される、等の結果を得た。また、光合成特性についても新知見を得たので報告する。
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© 2010 日本植物生理学会
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