抄録
多細胞生物の発生過程において細胞間のコミュニケーションは重要であることが知られる一方で、リプログラミング過程におけるその役割はほとんど知られていない。そこで我々は、切断刺激により分化細胞が頂端幹細胞へと運命変換するヒメツリガネゴケのリプログラミング過程での細胞間コミュニケーションの役割を、レーザーアブレーション装置を用いて解析した。単離1細胞処理をした場合、約80%という高頻度で幹細胞化したことから、葉細胞は等価な細胞グループとみなすことができると考えられる。次に隣接した2細胞を単離した場合には、これら2つの細胞は異なる細胞運命を示し、一方は幹細胞化したがその隣接細胞の幹細胞化は抑制された。さらに、1つの破壊細胞によって隔てた2細胞を単離した場合には、両方ともに幹細胞化された。これらの結果から、葉細胞のリプログラミング過程において、幹細胞化運命を獲得した細胞は隣接細胞の幹細胞化を抑制することが示唆された。