抄録
シロイヌナズナの3種の相同性が高いABA活性化型SnRK2タンパク質リン酸化酵素SRK2D/SnRK2.2、SRK2E/SnRK2.6/OST1、SRK2I/SnRK2.3の種子成熟・発芽における機能を調べた。種子成熟・発芽時に、これらは主に核に局在していた。srk2d、srk2e、srk2i一重変異体、二重変異体種子に比べ、srk2d srk2e srk2i三重変異体では、種子成熟期に生育阻害や乾燥耐性の低下が見られた。三重変異体種子では、休眠能の低下、穂発芽、極めて強いABA非感受性、ABA量の増加も見られた。三重変異体種子では、ABI5を含むbZIP断片のゲル内リン酸化が見られなくなった。マイクロアレイ解析により、abi5種子、abi3種子で発現レベルが低下している遺伝子のうち、48%、30%の遺伝子の発現レベルが三重変異体種子でも低下していることが示された。さらに、三重変異体種子では、ABA誘導性発現を示す遺伝子の発現レベルの低下や、ABA抑制性発現を示す遺伝子の発現レベルの上昇といったグローバルな遺伝子発現の変化が見られた。以上の結果から、これらのタンパク質リン酸化酵素は、広範囲にわたるABA応答性遺伝子の発現制御を通じて、種子成熟、発芽をコントロールしていることが示唆された。