抄録
マメ科植物では窒素供給量が根粒着生に影響する。また、外因性のジャスモン酸(JA)がミヤコグサの根粒着生を抑制することが報告されたが、ダイズではJA誘導性のVSP遺伝子発現が窒素負荷で誘導されることも示されている。これらのことから、窒素負荷によるJA量の変化が根粒着生制御に関与する可能性が示唆された。本研究では、根粒着生における窒素供給量とJA生成量の関係を遺伝子レベルで解明することを目的とした。
根粒菌の植菌直後と植菌2週後の土壌中の硝酸濃度を50 μM、または5 mMとし、植菌3週後の根粒数及びヘムb量を測定した。その結果、植菌後50 μM硝酸で3週間生育させると最も多くの根粒着生がみられ、ヘムb量も高かった。これに対して、植菌2週後に土壌中の硝酸濃度を5 mMに上げると根粒数、ヘムb量ともに減少した。これらのことから、窒素供給量がミヤコグサの根粒着生数やレグヘモグロビン量を制御していることが明らかとなった。
次に窒素供給量とJA生合成系の関係を明らかにするために、JA生合成鍵酵素であるアレンオキシドシンターゼ(AOS)様遺伝子をESTデータベースから見出した。当該遺伝子は大腸菌発現による機能解析からAOSと同定した。根粒菌植菌後に土壌中の硝酸濃度を変え、AOS発現量の経時変化を測定したが、ミヤコグサAOS発現量は土壌中の硝酸濃度の変化に対して顕著な違いを示さなかった。