日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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東海丘陵要素植物トウカイコモウセンゴケとその両親種における窒素感受性の違いについて
*豊田 歩市橋 康範近藤 香苗中 辰元吉村 久上野 薫南 基泰小俣 達男小田原 卓郎那須 守米村 惣太郎横田 樹広愛知 真木子
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p. 0444

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抄録
モウセンゴケ属植物は一般に貧栄養湿地に生育するが,中部大学内の自生地9箇所の水質を調べたところ,モウセンゴケ(Dr)自生地は硝酸イオン濃度3μM以下であったのに対し,トウカイコモウセンゴケ(Dt)自生地は1~200μMで平均50μMと比較的富栄養であった.Dtの両親種であるDrとコモウセンゴケ(Ds)は単一系統に属し,モウセンゴケ属内で近縁な関係であるので,これら3種について窒素濃度と生育の関係を比較した結果,KNO3 1mM以下の培地では3種共良好に生育したが,15mMでは3種共地上部が枯死し,5mMではDrよりDsDtの生育が良好であった.窒素源を(NH4)2SO4とすると葉の伸長は良好になったが,生存個体数については硝酸培地の場合と同様の結果であった.一方,15mMKCl培地では3種とも良好な生育を示したので,KNO3培地での生育不良の原因が塩ストレスでないことが示された.このことから,3種のモウセンゴケ属植物は硝酸態窒素よりアンモニア態窒素をやや好み,いずれも高濃度の窒素により生育が阻害されるが,Drが特に窒素感受性が高く,Dt,Dsは比較的強い窒素耐性をもつことが明らかとなった.このことは,Dtの窒素耐性がDsの形質を受け継いだものであることを示唆した.今後は,Dt,DsDrの窒素感受性の差異の原因を解明するために窒素同化関連酵素の性質等を解析する.
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© 2010 日本植物生理学会
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