抄録
クロロフィル-c(Chl-c)は、酸素発生型光合成を行う藻類などに幅広く分布し、補助集光機能を担う色素と考えられている。Chl-cは、ポルフィリン骨格を有し、その17位にアクリレート残基(17-CH=CH-COOH)が結合しているのが特徴である。また、その7,8-位の置換基によりChl-c1 (7-methyl,8-ethyl)、Chl-c2 (7-methyl,8-vinyl)、Chl-c3 (7-methoxycarbonyl,8-vinyl)など数種類の類縁体が存在する。これまでに我々は、珪藻由来のChl-c1及びChl-c2に対して、NMR・CD・キラルHPLCを用いて詳細な立体構造解析を行ってきた。本研究では、円石藻の一種であるEmiliania huxleyiからChl-c3(Chl-c2も含む)を単離・精製し、まずその立体構造解析を行った。Chl-c1、Chl-c2と同様に、17位のアクリレート残基の回転異性構造としてcisoid構造を有すこと、エナンチオマー型光学異性構造として(132R)-構造を有すことが確認された。Chl-c類におけるエナンチオ選択性を一般化するために、他の光合成生物についても解析を行った。以上の立体構造解析に加え、周辺置換基の違いによるChl-c類の蛍光発光量子収率への影響も検討したので併せて報告する。