抄録
渦鞭毛藻Symbiodiniumは、光合成色素としてChl a、Chl c2とカロテノイドの一種、ペリジニンを持つ酸素発生型光合成生物である。今回我々は、渦鞭毛藻Symbiodiniumにおける光捕集とエネルギー伝達について、時間分解蛍光分光法により検討を行った。蛍光減衰曲線および時間分解蛍光スペクトルは、時間相関単一光子計数法により測定した。室温で測定した時間分解蛍光スペクトルは時間変化を示さず、680 nm にピークを持つChl aからの蛍光が観測された。これは、Chl c2やペリジニンからChl aへのエネルギー移動は数ピコ秒以内に起こり、熱平衡状態が形成されていることを示している。一方、77 Kでは弱いながらもChl c2からの蛍光が645 nmに観測された。この蛍光は40 psの時定数で減衰し、対応する蛍光の立ち上がりがChl a蛍光に観測された。77 Kにおいて、Chl c2からChl aへのエネルギー移動が40 psで起こっていることが確認された。講演では、Chl a間でのエネルギー移動過程やペリジニンからChlへのエネルギー移動過程についても考察を行う。