日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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光化学系IIアンテナで吸収された光エネルギーの分配率測定法の確立と日周変化によるイネの光合成活性の変化についての解析
*石田 智森田 健一佐藤 文彦遠藤 剛
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p. 0469

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抄録
光化学系II(PSII)アンテナで吸収された光エネルギーは電子伝達系により炭酸固定に必要なエネルギーの生産に用いられる他、熱や蛍光として放散される。イネ(日本晴)において熱や蛍光として放散される割合は20-70%に上り、エネルギー放散経路とその割合を特定することがイネの光合成機能増強を検討するうえで重要となる。現在、PAMクロロフィル蛍光法を用いた2種類のエネルギー分配率の推定法が主に提唱されているが、両者とも生化学的な裏づけが不十分で一般に認知されたとはいえない。
本発表では、(1)キサントフィルサイクルに依存した熱放散系を消失させたイネRNAiラインを用いた解析により、PSIIアンテナで吸収された光エネルギーから、PSIIアンテナ熱放散系、キサントフィルサイクルに依存した熱放散系、PSII内熱放散系、電子伝達系の4経路への分配率を簡便に推定する方法の確立と、同手法を用いた(2)水田におけるイネの日周変化による光ストレスおよびエネルギー分配率の測定結果を報告する。特に、キサントフィルサイクルに依存した熱放散量の指標としてNPQ(=(Fm-Fm’)/Fm’)を用いた場合、両者が比例関係にないために強光下で高く見積もられる傾向にあることを示すとともに、キサントフィルサイクルに依存した熱放散系の定量にはNPQ-TD(=Fo’/Fm’-Fo/Fm)を用いる必要があることを報告する。
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© 2010 日本植物生理学会
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