日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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光化学系IIにおけるチロシンYZとD1-H190の相互作用
*高橋 亮太杉浦 美羽Boussac Alain野口 巧
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p. 0473

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抄録
光化学系IIにおいて、チロシンYZ(D1-Y161)はMnクラスターからP680への電子伝達を仲介し、一方、YD(D2-Y160)はP680への副次的電子供与体としての機能を持つ。これらのチロシンはいずれも、酸化に伴ってプロトン解離し、中性ラジカルとなる。PSIIのX線結晶モデルによると、YZ及びYDの水酸基の近傍にはHisが存在しているが、チロシンとの相互作用の詳細は未だ明らかとされていない。そこで本研究では、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて、YZの水素結合構造を調べた。Thermosynechococcus elongatus由来の光化学系IIコア複合体を用いて、光誘起YZ•/YZFTIR差スペクトルを得た。[4-13C]Tyr置換試料の測定から、1256 cm-1のバンドは、YZ水酸基のCO伸縮及びCOH変角振動がカップルしたモードに帰属され、この振動数からYZが水素結合ドナー•アクセプター構造を持つことが示された。また、2600 cm-1付近に、YD•/YDスペクトルには現われない、HisのNH伸縮バンドのフェルミ共鳴ピークが観測された。このことは、YZとD1-H190の間に、YDとD2-H189間よりも強い水素結合が形成されていることを示している。この水素結合は、YZの電子伝達反応において重要な役割を果たしていると考えられる。
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© 2010 日本植物生理学会
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