日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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除草剤効果による光化学系IIの光傷害機構の解析
井手段 一聖*野口 巧
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p. 0474

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抄録
植物の光合成能は強光下において低下するが、それは主に光化学系IIの光傷害によって引き起こされることが知られている。しかし、その光傷害過程の詳細は未だ明らかとされていない。そこで本研究では、光化学系IIの光傷害への除草剤効果を利用して、その分子機構を調べた。ホウレンソウから得た光化学系II膜標品、及び、それに除草剤としてDCMUまたはbromoxynilを添加した試料に強光照射(2000 μE m-2 s-1)を施し、照射時間に対する、Mnクラスター、QA、及びP680の活性をフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて評価した。その結果、(1)QAとMnクラスターのFTIRシグナルは、いずれの試料においても、ほぼ同時に減少する、(2)P680は常にQAよりも遅れて失活する、(3)これらのシグナル減少は、bromoxynil及びDCMU存在下において、コントロール試料よりもそれぞれ速く、及び遅くなる、ことが示された。これらの結果より、光化学系IIの光傷害は、Mnクラスターの破壊がトリガーとなって引き起こされるのでなく、QAの二重還元による脱離が律速になって起こることが示された。QAの二重還元速度の違いは、除草剤によるQAの酸化還元電位の変化によって説明できる。この除草剤効果の結果は、これまで提唱されてきた光化学系IIの光傷害の還元側機構の実験的証拠を与えるものである。
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© 2010 日本植物生理学会
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