抄録
花粉壁の外層を構成するエキシンは種特異的な構造をしており、受粉過程において重要な役割を果たすと言われている。しかしエキシンの形成機構は謎に包まれ、それに関わる遺伝子についてはまだほとんど知見が得られていない。我々はSEMを用いて変異原処理したシロイヌナズナのスクリーニングを行い、エキシン構造に異常を示す突然変異体を多数単離した。その中でkaonashi4(kns4)突然変異体は、エキシンの基本的構造は正常である一方で、エキシン層が薄くなるという表現型を示した。また稔性が低下し、花粉の形態にも異常が見られた。TEM観察より、エキシンの異常は四分子期から始まり、エキシン形成の足場となるプライムエキシンの量が少なくなっていることがわかった。原因遺伝子KNS4は、タンパク質の糖鎖の生合成に関わるβ1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼとよく似たタンパク質をコードしていた。類似のタンパク質をコードする遺伝子はシロイヌナズナに20個存在するが、その機能はほとんど明らかにされていない。RT-PCRとプロモーター-レポーター解析より、KNS4は四分子期前後のタペート細胞で特異的に発現することがわかった。またKNS4タンパク質はゴルジ体に局在することが示唆された。以上の結果から、KNS4は四分子期タペート細胞のゴルジ体に局在し、プライムエキシン構成成分の生合成に関与していることが推定された。