抄録
シロイヌナズナでは茎頂分裂組織を維持するためにCLV3ペプチドとCLV1受容体による細胞間シグナル伝達機構が重要な役割を担っている。これに対し、ミヤコグサ、ダイズ、タルウマゴヤシなどのマメ科植物では、CLV1のオーソログ遺伝子(HAR1, NTS1/NARK, SUNN)の変異体は根粒を過剰に着生する表現型を示す一方で茎頂の形態に関する異常は報告されておらず、それらの遺伝子は茎頂において発現が検出されていない。従ってマメ科植物では、CLV3-CLV1シグナル伝達系のような機構が茎頂分裂組織の維持に関わっているのかどうかはこれまで不明であった。そこで我々はミヤコグサにおけるCLV3様遺伝子(LjCLV3)に着目し、その機能解析を行った。In situ hybridizationによる発現解析ではLjCLV3は茎頂分裂組織、花序分裂組織及び花芽分裂組織の中央部の細胞でそれぞれ発現が検出された。また、LjCLV3過剰発現コンストラクトを導入したカルスではシュートの再生が著しく抑制された。一方、LjCLV3発現抑制コンストラクトを導入したカルスではシュートの再生率が上昇し、その再生個体では茎の帯化や一つの花序に形成される花の数の増加が見られた。これらの結果からLjCLV3はミヤコグサの茎頂分裂組織の維持に関わる機能を持つことが示唆された。