抄録
アラビノガラクタンは、植物細胞壁形成において重要なタンパク質糖鎖の1つである。アラビノガラクタンの基本構造は、基質タンパク質のハイドロキシプロリン残基にガラクトースがO-型結合したものであり、その非還元末端側にはβ-1,3-結合でガラクトースが重合している。このアラビノガラクタン合成のハイドロキシプロリン残基へのガラクトース転移を行う酵素であるハイドロキシプロリンO-ガラクトース転移酵素 (HGT) は、酵素活性測定系が未だ確立していない。そこで、HGTのin vitro酵素活性測定系を確立し、その諸性質について検討した。蛍光ラベルしたペプチドとシロイヌナズナ培養細胞T87株より抽出した粗酵素を用いて反応させ、HPLCおよびMALDI-TOF-MSによって検出することでHGTの活性を定量的に測定することができた。つぎに、HGTの諸性質について検討したところ、UDP-ガラクトース及びMn2+要求性であり、至適反応条件は、35度、pH7.0-8.0であった。細胞内局在をショ糖密度勾配遠心法によって解析したところ、HGTは主に小胞体に局在することが明らかになった。さらに、ペプチド基質特異性について検討したところ、HGTはペプチド中の唯一のハイドロキシプロリン残基にもガラクトースを付加することが明らかになった。