抄録
我々はこれまでに、シロイヌナズナ セリン-アルギニンリッチ(SR)タンパク質の中で、動物の主要な選択的スプライシング制御因子ASF/SF2のホモログ,atSR30が強光に対して迅速に応答することを見いだした。したがって、強光ストレスに応答した選択的スプライシング制御に主要な役割を果たしていることが示唆された。そこで本研究では、atSR30のスプライセオソーム形成に果たす役割およびそれによる選択的スプライシング制御機構の解明を試みた。
酵母two-hybrid解析の結果、atSR30は他の複数のSRタンパク質と相互作用したことから、atSR30はそれらと共役してスプライセオソーム構成に関与することが示唆された。次に、atSR30遺伝子破壊株(KO-sr30)を用いたタイリングアレイ解析により、強光ストレス下でスプライシング効率を制御される遺伝子の同定を試みた。その結果、野生株と比較してKO-sr30株では65箇所のゲノム領域で発現量の変化が認められた。半定量的RT-PCRによるそれらゲノム領域に位置する遺伝子の発現解析の結果から、atSR30によりスプライシング効率もしくは転写レベルが制御される遺伝子を同定した。以上より、強光ストレス下においてatSR30は選択的スプライシング制御を介して様々な遺伝子の発現制御に機能していることが示唆された。