抄録
アクアポリンは植物の水輸送を担う重要な膜タンパク質である。植物の根のアクアポリン遺伝子発現量は日周変動する。この日周変動は明暗日周によって作り出されるサーカディアンリズムに起因すると考えられてきた。しかし本研究では、光自体ではなく光照射により地上部からの蒸散要求が増加することが日周変動の主要因ではないかという新仮説を立て、その検証を試みた。12時間明期・12時間暗期で生育させたイネの根のアクアポリン遺伝子発現量は暗期に低く明期に高い日周変動を示したが、そのリズムの振幅はアクアポリンのメンバーにより異なった。OsPIP2;1とOsPIP2;2は、明期開始2時間後に最大値、暗期開始数時間後に最低値をもつ緩やかな日周変動を示した。一方、根特異的に存在するアクアポリンOsPIP2;4とOsPIP2;5は似たような日周変動のパターンを持つものの、明期開始1から4時間後の間に一過的に非常に激しく発現量が増減し、大きなピークを示した。12時間暗期の後にさらに暗期を追加した場合、あるいは光照射下でも加湿して蒸散を阻害した場合にはこのような発現の強い誘導は見られなかった。これらの結果から、光照射による蒸散の開始がOsPIP2;4とOsPIP2;5で見られるような遺伝子発現の一過的な上昇を引き起こす要因である可能性が示唆された。