日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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Inhibitor-3はPP1調節サブユニットとしてシロイヌナズナの初期胚発生に機能する
*武宮 淳史有吉 千絵島崎 研一郎
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p. 0646

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抄録
プロテインホスファターゼ1(PP1)は真核生物に高度に保存されたタンパク質であり、細胞内において触媒サブユニット(PP1c)と多種の調節サブユニットからなるホロ酵素を形成し、多様な反応に関与する。ホロ酵素としての触媒活性、細胞内局在、基質特異性はPP1cに結合する調節サブユニットの性質により規定されるが、植物における調節サブユニットは一つも同定されていない。本研究ではPP1c結合タンパク質の探索を行い、シロイヌナズナのPP1調節サブユニットとしてInhibitor-3(Inh3)を単離した。Inh3はPP1cの認識に必要なRVxFモチーフを介してPP1cと結合し、PP1cの活性を阻害した。GFP融合Inh3とmCherry融合PP1cをソラマメ孔辺細胞に一過的に共発現させたところ、両者は細胞質と核で共局在した。INH3のT-DNA挿入変異体では、球状胚で発生が停止し胚致死変異の表現型を示した。inh3変異体に野生型のINH3遺伝子を形質転換すると胚致死変異は相補されたが、RVxFモチーフ内のアミノ酸置換によりPP1cとの結合能を欠損させた変異型INH3では相補されなかった。さらにRNAiによりINH3の発現を抑制させた形質転換体では種子形成が阻害された。以上の結果からInh3はPP1調節サブユニットとして機能し、シロイヌナズナの初期胚発生に必須の因子であることが示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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