日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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ヨシ茎における新規カドミウム結合物質の特徴とSH基の役割
*府川 さやか三輪 睿太郎樋口 恭子
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p. 0684

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抄録
ヨシは様々な環境に自生するイネ科多年生草本であり、Cd、Zn、Pbに耐性を持つことが報告されている。ヨシ地上部のCd分配は、茎に葉の4倍のCdが存在し茎Cdの約70%が可溶性であることが特徴である。Cd 100μMを含む水耕液で1週間処理したヨシから茎細胞汁液を採取し限外ろ過法を用いて分画すると、60%のCdが分子量10k-50kDa画分から検出された。ファイトキレーチンなどのSH基含有ペプチドの多くは10kDa以下であるため、新規Cd解毒物質の存在が考えられる。まずこの画分でSH基によるCd結合の可能性を検討した。SH基含量はCd処理により1.6倍に増加したが、この画分のSH:Cdは1:5であったためSH基と結合したCdはわずかであると考えられた。さらにこの画分にジチオスレイトール添加してもCdが遊離しなかったことからも、支持されると考えられる。次にこの高分子Cd結合物質の構造推定のために各種分解酵素で細胞汁液を処理したところ、α―アミラーゼ添加区でのみCdが低分子画分に移行した。したがってCdの無毒化を担う高分子物質は糖を主成分とするαグルカンを基本骨格としていると推察された。10k-50kDa画分にメルカプトエタノールを添加したところ20%程度のCdが遊離した。高分子物質表層にはSH基を介したCd結合は存在しないが、SS結合が物質の立体構造の形成に関与する可能性が考えられた。
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© 2010 日本植物生理学会
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