抄録
ユーカリ・グロブラス (Eucalyptus globulus) の4.5ヶ月齢の実生を材料に,Rubiscoの量および生合成量,葉への窒素流入量およびRubiscoをコードする遺伝子のmRNA量の葉位の違いによる変化を調べた.単位葉新鮮重当たりのRubisco量は展開中の葉で若干増加し最上位完全展開葉においてほぼ最大となった後,最下位葉において若干低下するまで維持されていた.その一方で,Rubiscoの生合成量は上位葉で高かったが,葉位の低下に伴い急激に低下し,完全展開後の葉においては著しく低くなっていた.RBCSおよびrbcLのmRNAの量的変動はRubisco生合成のそれと概ね一致していたが,葉への窒素流入量の方がより高い相関関係にあった.以上のことから,ユーカリ・グロブラスの実生の葉におけるRubiscoの生合成は,これまでに報告されているいくつかの草本植物と同様に,Rubiscoをコードする遺伝子のmRNA量よりもむしろ葉への窒素流入量により決定されると考えられた.また,Rubisco量が展開中の葉で増加したのはその生合成が活発だったためであるが,完全展開後に維持されたのはその分解が生合成と同程度に低く抑えられていたためであること,さらに最下位葉において減少したのはその分解が促進されたためであることが示唆された.