看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2024石川
セッションID: 2024.2_S1-2
会議情報

シンポジウム 1
質量分析技術で探究する妊婦血清
*周尾 卓也
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

詳細
抄録

体内のビタミン D は多くが皮膚で生合成されるともに、一部が食餌から摂取される。これらビタミン D は肝臓と腎臓で順を追って2回の水酸化反応を受けるこ とで様々な生理活性を発揮するが、ビタミン D 充足の指標となる貯蔵量は肝臓 で水酸化した 25 - ヒドロキシビタミン D の血中濃度で評価されている。

最近になって、ビタミン D 欠乏とむずむず脚症候群との関連が注目されるよう になってきた。むずむず脚症候群の症状が頻発し、増悪する妊娠後期の血中濃 度を検証した私たちの先行研究においても、臨床で採用されている血液化学検 査の CLEIA 法では定量限界値の 4ng/mLを下回るほどに 25 - ヒドロキシビタミ ン D 低値の患者を複数認めていた。

妊婦むずむず脚症候群における発症のカットオフ値を明確にする目的で、質 量分析技術の一つであるLC-multiple-reaction-monitoring-MS 法の高感度測 定を導入したことで、妊婦 205 名を対象とした定量結果から、これまでに10ng/ mLという25 - ヒドロキシビタミン D の閾値が得られており、現在も調査を継続し ている。

他方、新しい質量分析技術であるLC-high-resolution-MS 法の高分 解能測 定を活用して、25 - ヒドロキシビタミン D のように予めに標的分子を絞ることなく、 体内の生化学反応で生じる有機化合物−代謝物−を幅広く同定する取り組みも 進めている。

代謝物は、生命活動の表現型、あるいは表現型が現れる直前の変動に直結 していることから、妊娠、分娩、産後に急激に変化する母体の血液中には、物理 化学的性質の異なる多様な代謝物が盛り込まれているはずで、これら代謝物の 特徴によって、母子の健康状態を描出できる可能性があると考えている。

この先には、妊婦と非妊婦や健常と病態とを比較する方策で、血中代謝物の 全体像から周産期母子の健康を見守るバイオマーカー探索に有用な解析プラッ トフォームの構築とその提供を目指している。

著者関連情報
© 2024 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top