抄録
Eucalyptus globulusは成長性、パルプ化適性に優れた樹種であり、商業植林では重要な樹種である。しかし、E.globulusは発根率が低いことから、挿し木による増殖が難しい。そこで、E.globulusの組織培養物を用いて、不定根形成にオーキシンが及ぼす影響について調査した。高CO2条件下で、E.globulusの7系統をIndole-3-butyric acid(IBA)で発根処理することによって、発根率の増加を確認した。一方、オーキシン極性輸送阻害剤であるN-1-naphtylphthalamic acid(NPA)処理により濃度依存的に不定根形成は抑制された。また、不定根形成能の異なる9系統のE.globulusについて重力屈性を調査した結果、不定根形成能の低い系統ではほとんど重力屈性を示さず、不定根形成能と重力屈性の間に強い相関が認められた。これは、E.globulusの不定根形成には、オーキシンの極性輸送が重要であることを示唆している。また、内生オーキシン量について調査した結果、不定根形成能の高い系統では内生IAA量が高く、発根処理8日後にはIAA-Asp量が顕著に増加した。現在、E.globulusからオーキシン合成に関与するP450系遺伝子とIAA-アミノ酸複合体合成酵素GH3遺伝子を単離し、不定根形成能と遺伝子発現との関連性について調査している。