抄録
植物は多様な二次代謝産物を生産するが、アルカロイドは特有の植物種に限定されており、その発現制御機構もほとんど解明されていない。我々はアルカロイドのうち最も多様なイソキノリンアルカロイドの生合成制御機構を、キンポウゲ科のオウレン(Coptis japonica)のベルベリン生合成系をモデルとして解析してきた(Kato et al. , 2007)。今回オウレンプロトプラストを用いた一過的RNAi系において、生合成酵素遺伝子の発現を包括的に抑制する因子として単離したCjbHLH1について報告する。CjbHLH1は、RNAiによる発現抑制のみならず、一過的過剰発現においても生合成酵素遺伝子の発現を抑制しており、他の因子の関与が考えられるものであった。
CjbHLH1の詳細な機能解析のためにデータベースを検索した結果、CjbHLH1がイソキノリンアルカロイド生合成系に特徴的なbHLH転写因子であることが明らかとなった。さらにGFPとの融合タンパク質を用いた解析によりCjbHLH1の核局在性が確認された。また、CjbHLH1(同融合)遺伝子ならびに生合成酵素遺伝子プロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を融合させたレポーター遺伝子を用いた一過的レポーターアッセイにより、CjbHLH1が生合成酵素遺伝子の転写を正に制御することが明らかとなった。現在、CjbHLH1の相互作用因子の探索を行っている。