抄録
ホウ素は植物の必須栄養素であるとともに、過剰条件では毒ともなる元素であり、その土壌からの吸収と植物体内での移行は厳密に制御されている。シロイヌナズナNIP5;1は細胞へのホウ素の吸収を促進するホウ酸チャネルであり,低ホウ素条件時にホウ素の根への吸収を担う。一方,BOR1はホウ素の細胞外への排出を促進するホウ酸トランスポーターであり,低ホウ素条件時にホウ素の導管への輸送を担う。それら生理学的役割に対応するように、NIP5;1は根の表皮細胞において遠心側(土壌側)の細胞膜に、BOR1は表皮や内皮細胞において求基側(中心柱側)の細胞膜に極性を持って局在する。またBOR1は、高濃度のホウ素に応答しエンドソームへ移行し液胞において分解される。今回我々は両輸送体の特に極性局在のメカニズムを探るため、GFP-NIP5;1とBOR1-GFPのFRAP法による細胞膜内拡散速度の計測を行った。表皮細胞において、細胞膜に無極性に局在するマーカータンパク質であるLti6a-GFPと比較し、GFP-NIP5;1とBOR1-GFPは膜内拡散速度が1/10程度に遅いことが示唆された。また、全反射顕微鏡を用いてGFP-NIP5;1とBOR1-GFPの細胞膜とその近傍領域における局在解析を行っている。それらの結果をふまえ、NIP5;1とBOR1の極性局在メカニズムについて議論したい。