抄録
水輸送に関わる膜タンパク質であるアクアポリンは植物では30種以上のメンバーから構成されている。この多様性は植物の体内での水や溶質の移動の際、それぞれのアクアポリンが重要で特別な役割を果たしていることを示唆している。これまでにイネ(cv.Akitakomachi)の根で発現量の多いアクアポリン、あるいは水ストレスに対して鋭敏に応答するアクアポリンはほぼ特定されたが、根で発現量が少ないものや水ストレスに対する応答性の低いアクアポリンも多かった。そこで本研究では地上部に着目し、葉、節間、節、穂首、穂、葯、花糸、めしべ、鱗被、登熟中の籾などの各器官からRNA抽出を試み、イネアクアポリン全33種の内30種についてrealtimePCR法にてmRNA量を定量し、発現部位や時刻変化を調べた。その結果、登熟中の籾、鱗被、葯では他の器官には見られない特徴的なアクアポリンの発現が見られた。また、節間におけるメジャーなアクアポリン5種は成熟部位より成長部位で発現量が多かった。特にPIP2;6、TIP2;2ではその傾向が顕著であった。これらは成長中の組織での水輸送に重要なアクアポリンである可能性が考えられた。葉、節間、節での時刻変化は同一のアクアポリンメンバーであってもそれぞれの部位で異なったパターンを示していた。これらの結果から、不明な点の多かった地上部のアクアポリンの役割が明らかになってきた。