抄録
ラン藻や酵母においてヒスチジンキナーゼが浸透圧ストレスの受容に関与することが知られている。我々はこれまでにシロイヌナズナのヒスチジンキナーゼのうちAHK1が浸透圧ストレス応答を正に、サイトカイニンレセプターであるAHK2, AHK3が浸透圧ストレス応答を負に制御する因子であることを明らかにした。高等植物において普遍的にヒスチジンキナーゼが浸透圧ストレス応答に関与しているかどうか明らかにするために、本研究ではイネのヒスチジンキナーゼ遺伝子に着目し、浸透圧ストレス応答における役割について解析した。
ゲノムデータベース上で各AHKの相同遺伝子の探索を行ったところ、イネにはAHK1の相同遺伝子が存在しないこと、サイトカイニンレセプター相同遺伝子が4つ(OsHK3, OsHK4, OsHK5, OsHK6)存在していることが示された。OsHK3, OsHK4, OsHK5, OsHK6のORFを単離して、酵母変異体の相補実験を行った。その結果、この系でOsHK3, OsHK4, OsHK5, OsHK6がサイトカイニンレセプターとして機能し得ること、OsHK6がサイトカイニン依存的に浸透圧センサーとして機能し得ることが示された。現在、これらの遺伝子を過剰発現するイネ形質転換体のサイトカイニン応答およびストレス応答の解析を進めているので、これらの結果も合わせて報告する。