抄録
シロイヌナズナのDREB2タンパク質は、高温・乾燥・塩などのストレス応答に関与する転写因子であり、多くの環境ストレス誘導性遺伝子のプロモーター領域に存在するDRE/CRT配列に特異的に結合することでそれらの遺伝子の転写を活性化する。イネにおいてDREB2タイプの遺伝子は5種類存在し、OsDREB2ファミリーを形成している。これまでの解析で、OsDREB2AとOsDREB2Bのみが非生物学的ストレス誘導性の発現パターンを示し、特にOsDREB2Bが強いストレス応答を示すことを明らかにした。また培養細胞を用いたトランジェント発現解析より、OsDREB2Bは細胞内で核に局在し、OsDREB2ファミリー内の他の遺伝子と比べて高い転写活性化能を示すことを明らかにした。
今回我々はOsDREB2Bを過剰発現させたシロイヌナズナの解析を行い、シロイヌナズナのDREB2A標的遺伝子の発現が増加していること、形質転換植物の乾燥・高温耐性が向上することを明らかにした。このことからOsDREB2BはDREB2タイプの転写因子として機能していることが示唆され、イネにおいてもストレス誘導性遺伝子の発現制御に関与していることが期待された。現在、イネにおけるOsDREB2ファミリーの働きについてT-DNA挿入変異体などを用いた解析を行っており、それらについても合わせて報告する。