抄録
ジャスモン酸(JA)は病傷害のシグナル伝達を担う植物ホルモンである。近年、JAシグナルのリプレッサーとしてJAZ(Jasmonate ZIM-domain)タンパク質がシロイヌナズナで見出され、その機能性が証明された。JA誘導体により、F-boxタンパク質をコードするCOI1タンパク質とJAZタンパク質の複合体が形成された結果、26SプロテアソームによってJAZタンパク質が分解され、これによってJAシグナルが下流に伝達される。
JAZ遺伝子群は高等植物に広く保存されていると考えられるが、イネゲノム上では15種のJAZ遺伝子が存在すると推定されている(Ye et al. Plant Mol. Biol. 2009)。しかし、イネにおいてそれらの機能は不明であるため、本研究では、イネにおけるJAZ遺伝子の機能解明を目的とした。
6種のイネJAZ遺伝子をそれぞれユビキチンプロモーターの下流に連結したコンストラクトを日本晴に導入し、JAZ高発現株を作出した。そのうち1種のJAZ高発現株では全長、桿長及び止葉長がいずれも増加した。また、そのJAZ遺伝子の発現に対する植物ホルモンへの応答を解析したところ、JA及びサリチル酸(SA)により強く誘導されることが明らかとなった。これらのことから、イネにおいてJAZ遺伝子が伸長促進に機能すること、またJA及びSA応答に関与することが示唆された。