抄録
我々はケミカルバイオロジー手法を用いて抵抗性遺伝子依存性の病害応答機構の解明を行っている。独自のスクリーニング系を用いた市販の多様性化合物ライブラリーの大規模スクリーニングを実施し、これまでにシロイヌナズナ培養細胞がトマト斑葉細菌病菌DC3000 Rpm1株の感染に対して示す過敏感細胞死を亢進する低分子有機化合物を7種類単離している。この中の一つであるCB_6は植物体に添加するとサリチル酸(SA)合成能非依存的に防御遺伝子PR1の発現を誘導した。一方でSA内生量には影響しなかったことから、CB_6はフィードバック制御には関与しないSAのパーシャルアゴニストであると考えられた。パーシャルアゴニストは機能重複によって解明が困難であったアブシジン酸受容体の解明を成功に導いた実績があることから、現在CB_6を用いた遺伝学的及び生化学的アプローチによってSA下流シグナルの解明を進めている。今回、シロイヌナズナのEMS処理種子からCB_6の生育抑制効果に非感受性を示すsgi (SA agonist insensitive)変異体を28個体単離した。これらは非感受性の程度により二群に分類された。また非感受性の程度が弱いものの中には、SA(400mM)含有寒天培地における感受性試験において、npr1変異体と同様に白化するものが4個体含まれていた。