抄録
ここ数年ABA受容体の研究は混乱していたが、昨年に可溶性のABA受容体(PYR/PYL/RCAR)が単離されたことで、ABAのシグナル伝達系の研究は急速な進展を見せている。この受容体は、ABA依存的にプロテインホスファターゼ(PP2C)の活性を阻害する性質がある。一方、我々は早くからABAシグナル伝達系とタンパク質のリン酸化に着目しており、SnRK2プロテインキナーゼやPP2Cの機能解析を進めてきた。今回、我々は(1) SnRK2がABAシグナル伝達の中心的な正の制御因子であること、(2) SnRK2とPP2Cが様々な組み合わせで相互作用すること、(3) PP2CがSnRK2を脱リン酸化することで活性化を抑制していること、等を一連の実験により証明した。以前、我々はSnRK2がABA応答性遺伝子発現の主要な転写因子であるAREB/ABFをリン酸化することを示しており、これによってABAのシグナル伝達経路は受容体から遺伝子発現まで(受容体→PP2C→SnRK2→bZIP)、一本の線でつながったことになる。さらに、我々はPP2Cのabi1-1型変異がSnRK2を常に脱リン酸化する優勢変異であることを実験的に証明し、長年の謎だったabi1-1変異体のABA非感受性のメカニズムを解明することに成功した。