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石油に似た炭化水素成分を有するオイルを大量に産生する緑藻ボトリオコッカスは石油代替資源生物として注目されているが、そのオイル生合成機構の詳細は不明であり、オイル生合成関連酵素遺伝子の多くは未同定である。そこで本研究ではボトリオコッカスのオイル生合成機構を分子生物学的観点から解明するために、まず超長鎖不飽和脂肪酸由来の炭化水素オイルを生合成するRace Aの代表株とトリテルペン由来の炭化水素オイルを生合成するRace Bの代表株を用いて新奇のEST (expressed sequence tag)データセットを得た。さらに、Race A、Race B代表株でのオイル生合成関連酵素遺伝子の発現パターンを、ESTカウントの比較およびreal-time PCRによる定量によって明らかにした。これにより、これまで不明であった炭化水素オイル生合成経路の詳細に関する新たな知見を得た。超長鎖不飽和脂肪酸の生合成に関しては、(i)acyl-acp伸長が主要な脂肪酸伸長経路であること、(ii)脂肪酸の不飽和化がacyl-acp desaturaseだけでなくacyl-CoA desaturaseによっても行われることが示唆された。トリテルペンの生合成に関しては、2-C-Methyl-D-erythritol-4-phosphate (MEP)経路への2つの基質流入口が働いていることが示唆された。