抄録
シロイヌナズナの高親和性硝酸イオン(NO3-)輸送体遺伝子ファミリー(AtNRT2)は7遺伝子(AtNRT2.1-2.7)から構成される。これまでの研究から、AtNRT2.1とAtNRT2.2は根におけるNO3-の取り込みに、AtNRT2.7は種子におけるNO3-の貯蔵に関わることが明らかにされている。しかし、他のメンバーの生理的な役割については未だ不明である。
今回は、低窒素条件において発現誘導されるAtNRT2.4の機能解析を行った結果を報告する。AtNRT2.4は低窒素条件特異的に、主に側根の表皮細胞において発現する。また、AtNRT2.4-GFP融合タンパク質を発現する形質転換植物を用いた解析から、AtNRT2.4が背軸側の細胞膜に局在することが明らかとなった。AtNRT2.4 mRNAを注入したアフリカツメガエルの卵母細胞は、NO3-取り込み活性を示すことから、この遺伝子が低窒素条件における外界からのNO3-の取り込みに関与することが強く示唆された。まだ予備実験の段階だが、T-DNA挿入変異体が低濃度(50 μM 以下)におけるNO3-取り込み活性低下の表現型を示すという結果を得ており、現在15 NO3-流入アッセイや生育調査等の詳細な解析を進めている。本発表ではその結果を報告すると共に、低窒素栄養適応応答におけるAtNRT2.4の生理的役割について考察する。