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NADH-グルタミン酸合成酵素(NADH-GOGAT)は、グルタミンと2-オキソグルタル酸から2分子のグルタミン酸を合成する酵素である。イネには、NADH-GOGAT1とNADH-GOGAT2の2種類のアイソザイムが存在する。イネの地上部において、NADH-GOGAT1は、未抽出葉身や頴花といったシンク器官の維管束組織に局在する。一方、NADH-GOGAT2は、成熟葉身や老化葉身といった、ソース器官の維管束組織に局在する。それぞれのNADH-GOGATの役割を明らかにするため、各NADH-GOGATの遺伝子破壊変異体を用いて、その表現型を観察した。これらの遺伝子破壊変異体を水田に移植し、収穫期まで栽培した。その結果、Nipponbareと比較して、NADH-GOGAT1並びにNADH-GOGAT2の変異体は、共に乾物重や収量が低下した。しかし、収量構成要素別に比べると、NADH-GOGAT1の変異体では、主に穂数が減少しているのに対し、NADH-GOGAT2の変異体では、主に一穂籾数が減少していた。このことから、2種類のNADH-GOGATでは、共に生産性に関与しているものの、異なる役割を持つことが明らかとなった。また、その機能は、お互いに相補しきれないものであった。現在、2種類のNADH-GOGATの窒素利用における機能を、詳細に解析している。