p. 0044
花粉壁の外層を構成するエキシン構造は、受粉過程において重要な役割を果たすと言われている。しかしその形成機構は謎に包まれ、分子遺伝学的知見はあまり得られていない。エキシン構造に異常を示す突然変異体のスクリーニングによって得られたシロイヌナズナkaonashi4 (kns4)は、エキシンの基本的構造を保ちながら、その厚さが野生型の半分ほどになるという表現型を示した。また稔性が低下し、花粉全体の形態にも異常が見られた。組織切片観察より、kns4は花粉母細胞の発達に異常を示し、四分子期にエキシン形成の足場となるプライムエキシンの量が少ないことがわかった。原因遺伝子KNS4は、動物のβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼと相同性の高いタンパク質をコードしていた。ヤリブ試薬を用いた生化学的解析より、kns4の四分子に含まれるアラビノガラクタンタンパク質(AGP)の量が野生型よりも減少していることが示された。また共局在解析から、KNS4タンパク質はゴルジ体に局在する可能性が示された。以上の結果から、KNS4は花粉母細胞または四分子期タペート細胞のゴルジ体に局在し、プライムエキシンに豊富に含まれるAGPの生合成に重要な働きを持つ、という仮説が考えられた。現在KNS4の発現場所を特定するための実験を行っている。