日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナの根において細胞膜プロトンポンプ活性が低下した突然変異株の単離
*井上 晋一郎木下 俊則
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p. 0048

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抄録

細胞膜プロトンポンプであるH+-ATPaseは、細胞膜を介したH+の能動輸送を行う一次輸送体であり、二次輸送体と共役した様々な物質の輸送、細胞の恒常性維持や細胞伸長に重要な役割を果たしている。これまでの研究により、H+-ATPaseの活性化には、自身のC末端スレオニン残基のリン酸化とリン酸化部位への14-3-3蛋白質の結合が必要であることが明らかとなっているが、このリン酸化を調節するプロテインキナーゼとホスファターゼ、また、その他の活性制御因子はほとんど明らかとなっていない。そこで本研究では、H+-ATPaseの活性制御に関わる因子を同定することを目的とし、H+-ATPase活性が低下した突然変異株のスクリーニングを行った。スクリーニングは、H+-ATPase活性が大きく寄与する低pH条件下での根の伸長を指標に行った。単離した変異体の一つE8-4変異株では、低pH条件下で根の伸長が野生株と比べ顕著に阻害された。興味深いことに、この変異株の根では、通常のpH条件下において、野生株に比べてH+-ATPase活性、および活性化に必須のスレオニン残基のリン酸化レベルが顕著に低下していることが明らかとなった。現在、E8-4変異株の原因遺伝子を同定に向けてマッピングを進めており、この結果も併せて報告する予定である。

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