抄録
ゲノムの倍数性の増加は、しばしば細胞体積の増大を伴うだけでなく、代謝産物蓄積量の変化をももたらすことが、経験的に知られている。しかしその理由は全く不明である。そこで本研究では、モデル植物のシロイヌナズナを4倍体にしたときの代謝産物プロファイルの変化を解析し、その原因として考えられることを追求することとした。まず最初に標準系統の一つColumbia野生株をコルヒチン処理により倍数化し、4倍体系統を作出した。これはすでに本大会でも報告の通り、細胞サイズが体積ベースでほぼ倍となっており、植物体のサイズもそれに伴って大型化しているが、成長はやや遅い。この4倍体系統についてフローサイトメトリー解析により葉の細胞の核内倍加のレベルを調べたところ、もとの2倍体と同様の核内倍加パターンであった。そこでこの4倍体系統と2倍体系統の間で、種子および各種栽培条件下での葉に含まれる代謝産物をワイドターゲット分析(Sawada et al., 2009)にかけ、その差を解析した。その結果、2倍体―4倍体の差は種子と葉の間、また栽培条件の間でそれぞれ異なり、共通要素はほとんど見られなかったが、種子においては興味深いことに、各種アミノ酸およびグルコシノレートの含有量が有意に増加していた。現在、この結果についてさらに解析を進めている。