抄録
植物の葉緑体とミトコンドリアでは、RNA編集(転写産物のCをUへと変換する過程)が高頻度に行われている(葉緑体で約30箇所、ミトコンドリアで500箇所以上)。我々は以前、これら標的C塩基は、pentatrico-peptide repeat(PPR)蛋白質が標的C塩基の上流十数塩基に結合することで特異的に認識されることを明らかにした。しかしPPR蛋白質が複数のRNA編集サイトを認識する場合、結合が予想されるRNA配列は互いにほとんど配列相同性を示さない。このことは、どのような分子機構を介してPPR蛋白質が複数のRNA編集サイトを特異的認識するのかという新たな疑問を投げかけた。この点を明らかにするために、複数のRNA編集サイトを認識するPPR蛋白質とそれら推定標的配列との結合を解析した。その結果、PPR蛋白質は、配列相同性を互いに示さない標的配列に特異的かつ同程度の結合能で結合できることが明らかになった。つまりこの結果は、PPR蛋白質は、標的RNA配列中の一部の塩基を特異的に認識することで複数のサイト認識を可能にしていることを強く示唆している。