日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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リン欠乏生育条件下でのシロイヌナズナ葉における貯蔵脂質蓄積の解析
*下嶋 美恵円 由香山道 桂子小泉 遼太遠藤 圭二尾崎 克也太田 啓之
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p. 0098

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抄録
光生育条件下の植物の葉では、葉緑体で生成された余分な三炭糖リン酸は葉緑体内でデンプンに変換され、デンプン粒として蓄積する。一方、植物の葉は、暗所老化時などに貯蔵脂質トリアシルグリセロール(TAG)を葉緑体外に蓄積することが知られている。しかし、デンプンとは異なり、光合成生育時の植物の葉におけるTAGは微量である。バイオマスが大きい葉で、バイオディーゼルや有用脂肪酸の原料となるTAGを蓄積できれば、新しい油脂原材料として実用化が期待できる。
我々は最近、植物をリン欠乏に曝すと、デンプンの過剰蓄積のみならず、葉や根でTAGの蓄積が顕著に起こることを見出した。さらに、デンプンをほとんど蓄積しないシロイヌナズナ変異体pgmでは、リン十分条件下でもTAGを蓄積することがわかった。このpgm変異体におけるTAGの蓄積は、リン欠乏にさらされるとより顕著になり、通常生育の野生株に含まれるTAGの約10倍にまで上昇し、その葉の電顕観察では多くの油滴が観察された。一方、根から吸収した無機リン酸を葉に輸送することができない変異体pho1では、通常生育でも葉にTAGが蓄積することがわかり、リンの欠乏がTAG蓄積に正の影響を与えていることがわかった。これらの研究結果は、葉のデンプンおよびTAGの生合成が、葉におけるそれらの含量を一定に維持するために、巧妙に制御されていることを示唆している。
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© 2011 日本植物生理学会
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