日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナFAB1のノックダウン植物と過剰発現植物は、エンドメンブレンの恒常性を損ない、多面的な発達異常を起こす。
*平野 朋子松沢 智彦竹川 薫佐藤 雅彦
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p. 0113

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抄録
Fab1/PIKfyve はPtdIns 3, 5-kinase 、すなわち、PtdIns 3-P からPtdIns (3,5) P2を合成する酵素であり、液胞やリソソーム維持において機能する。酵母のfab1欠損株は巨大化した液胞が見られるのが特徴であるが、シロイヌナズナFAB1AとFAB1Bを発現させると、液胞を相補した。さらにGFPを融合させてFAB1A/Bの細胞内局在を調べた結果、FAB1は根で、エンドソームに局在することがわかった。さらに、FAB1A/Bの発現をRNAiで誘導的に減少させた植物では、液胞の酸性化やエンドサイトーシスが損なわれた。これは、シロイヌナズナFAB1A/Bが酵母と同様に植物でもPtdIns 3, 5-kinaseとして機能したことを示している。また、根や根毛の成長阻害、オーキシンに対する感受性の減少、根の重力屈性の乱れなど、様々な異常を示した。これらの異常な表現型は、FAB1の過剰発現植物でも観察された。また、過剰発現の植物は、FAB1の発現量依存的に矮小化し、雄性不稔になり、花の形態異常を起こした。これらのことはFAB1A/Bの適切な発現量が、エンドソームや液胞を含むオルガネラ膜系の恒常性に重要であることを示している。現在、FAB1の発現異常で引き起こされる現象がAUX1やPIN1のリサイクリング異常に原因があるか否かについて研究を進めている。
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© 2011 日本植物生理学会
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