抄録
葉葉緑体において、NADP(H)は光合成などの一次代謝だけではなく、抗酸化系への還元力にも重要であるため、そのレベルおよびレドックス状態は厳密に制御されなければならない。これまでに我々は、シロイヌナズナ葉緑体局在型Nudix hydrolase 19(AtNUDX19)がNADPH加水分解活性を有すること、本酵素の発現は光強度に依存していることを明らかにした。そこで、AtNUDX19遺伝子破壊株(KO-nudx19)を用いて、AtNUDX19の光環境順応への関与について解析した。
通常光(100 μmol/m2/s)照射下において、野生株と比較してKO-nudx19ではNADPHおよびNADP+が増加および減少していた。また、それらの変化は強光(800 μmol/m2/s)下でより顕著であり、KO-nudx19の生育は野生株よりも促進していた。さらに、KO-nudx19では強光下でのカルビン回路の酵素群のイニシャル活性、炭酸同化能、および電子伝達速度が増加していた。また、多くの抗酸化酵素活性の上昇および酸化タンパク質レベルの減少が認められた。以上より、AtNUDX19は光環境順応における光合成能や抗酸化能の制御のためのコアレギュレーターとして機能していると考えられた。