抄録
Rubiscoの小サブユニットをコードする遺伝子RBCSは核ゲノム上にmultigene familyを形成しているが、葉のRubisco量の決定にどのように寄与しているかは明らかでない。本研究では4種のRBCS(AtRBCS1A、1B、2B、3B)を持つシロイヌナズナにおいて各遺伝子のT-DNA挿入変異体を単離し、抽薹開始時の成熟葉を用いて、葉における各RBCSのmRNA量、Rubisco量への影響を解析した。まずrbcs1a、rbcs3b変異体を単離し、交配により二重変異体rbcs1a3bを得た。野生体の葉ではRBCS1A、2B、3BのmRNAが主に蓄積していた。rbcs1aではRBCS1A mRNAは検出されず、rbcs3bではRBCS3B mRNAが野生体の約20%まで減少しており、rbcs1a3bでも同様に両mRNAが減少していた。各変異体で他のRBCS遺伝子のmRNA量に有意な変動はなかったため、全RBCS mRNA量は変異遺伝子の減少に伴い低下していた。葉のRubisco量も各変異体で有意に減少し、減少量はrbcs1aで野生体の約38%、rbcs3bで約20%、rbcs1a3bは約63%であった。以上の結果からシロイヌナズナの葉において、RBCS1A、3BはRubisco生合成に寄与しており、その発現抑制によりRubisco量が減少することが示された。