抄録
stomagenはシロイヌナズナにおいて気孔分化を促進する活性をもつシステインリッチペプチドである.STOMAGENとEPF2は同じEPF familyに属する遺伝子にもかかわらず,機能が正反対という特徴を持つ.EPF2遺伝子の過剰発現は気孔分化を抑制することが知られているが,合成したEPF2の投与によってもシロイヌナズナの気孔密度を減らすことができることを確認した.
stomagenとEPF2の機能の違いを探るために,我々は両者の生化学的解析を行った.stomagenの6つのシステイン残基を全てセリンに置換したペプチドは活性を失ったことから,stomagenのS-S結合と立体構造がその活性に重要であると考えられた.EPF2は8つのシステインをもち,そのうち6つはstomagenにも保存されている.EPF2特異的なシステインを含む領域(以下中間領域と呼ぶ)が,機能的差異を担うという仮説のもと,stomagenとEPF2の中間領域を取り換える実験を行った.驚くべきことにstomagenの中間領域をもつEPF2は気孔分化を促進する活性を示した.これらの結果は,中間領域の配列の違いがstomagenとEPF2との活性の違いを担っていることを示唆している.stomagenの機能ドメインの同定はEPF familyの機能推定や,機能分化の過程を推測するための大きな手掛かりになるだろう.