日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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維管束形成に関わるVASCULAR HYPERPLASIA遺伝子の解析
*槻木 竜二石橋 桂寺田 志穂岡田 清孝
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p. 0204

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抄録
協調的細胞分化のモデル系として、維管束形成を制御する仕組みを解析している。vascular hyperplasia (vah)変異体では、葉脈のパターンの異常や維管束細胞列数の横方向への増加が観察される。また、ATHB8の発現領域が拡大しており、VAHは前形成層に分化する細胞の横方向の数を負に制御することが示唆される。更に、根端メリステム活性の低下、静止中心や根端幹細胞ニッチマーカーの発現領域の拡大が見られることから、VAHは、根端の細胞分化に重要な役割を持つことも示唆される。野生型でオーキシンの極性輸送を阻害すると、葉脈形成領域と根端幹細胞ニッチ領域は共に拡大する。vah背景では、オーキシン極性輸送阻害によるこれら領域の拡大が昂進された。以上はオーキシンを介した細胞分化の領域の制限にVAHが関わることを示唆する。一方、根の木部形成を解析したところ、vahでは原生木部の分化抑制が観察された。原生木部の分化はサイトカイニンによって負に制御されることが知られている。サイトカイニンシグナル伝達に阻害的に働く遺伝子の機能欠損変異体では、原生木部の分化抑制が見られるが、vahとの二重変異体では抑制の表現型が昂進されていた。これらはサイトカイニンを介した細胞分化にVAHが関わることを示唆する。植物ホルモンによる協調的な細胞分化の制御とVAHとの関わりについて議論したい。
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© 2011 日本植物生理学会
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