日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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ペチュニアの揮発性芳香族化合物合成に関与する遺伝子の発現と代謝物の濃度の経時的な変化の違い
*岸本 久太郎中山 真義安藤 敏夫大久保 直美
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p. 0242

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抄録
野生ペチュニア(Petunia axillaris)の花の主要な香気成分は芳香族化合物であり、その生合成や発散は、夜間にピークを取る昼夜リズムを示す。ペチュニアの花冠における代謝物の変動を網羅的に解析したところ、芳香族化合物の前駆体であるシキミ酸や糖代謝物もまた類似の昼夜リズムを示した(大久保ら 2010 )。今回、トランスクリプトームによって、芳香族化合物生合成関連遺伝子の発現を調査した。その結果、これらの遺伝子発現の経時的な変化は、代謝物の変化と必ずしも一致しなかった。解糖系遺伝子は、多様な発現パターンを示し、いくつかのペントースリン酸経路遺伝子は、夜間に発現量が増加した。ペントースリン酸経路の一部、シキミ酸経路、S-アデノシルメチオニンサイクル、および非揮発性芳香族化合物の生合成における遺伝子発現は、暗期開始時にピークを示した。興味深いことに、揮発性芳香族化合物生合成遺伝子の発現は、芳香族化合物量が最も少ない日中にピークを示した。この結果は、遺伝子発現が、揮発性芳香族化合物の昼夜リズム形成にあまり寄与していないことを示唆している。また、複数の発現パターンが検出されたことから、これらを規定している複数の制御系が存在すると予想される。
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© 2011 日本植物生理学会
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