抄録
新型コロナウイルス(COVID-19)に対するmRNAワクチンが奏効したことを受けて、mRNA医薬のワクチンに限らない応用が期待されている。mRNAを生体内へ送達し、治療用タンパク質を細胞に産生させることで疾患治療を行うというコンセプトは、早くも1990年代には動物モデルでの成功例が報告されているものの、mRNAの不安定性が大きな問題となり、長く研究の進展は見られなかった。筆者らは、独自のmRNA送達キャリアであるナノミセルキャリアを用いることで、mRNAの不安定性を克服し疾患治療に応用するための基礎研究を行っている。本稿では、特に創薬が困難な中枢神経系疾患を標的とした基礎研究を、簡単な総括を交えて紹介する。